初段 K.S.
ちょっと前から、抜刀納刀の稽古がとても面白いです。ただ漫然と抜いて納めるのではなくて、呼吸を含め自分の体全体で一番いい時にいい角度で抜いて、一番良い弧を描いて、また戻すことを目指します。
その、言葉にできない「あとほんのちょっと先」を求めてひたすら抜いて納めると、時を忘れます。
この抜いて納めるという動作、人の一生のようであるとも思ったもありました。剣が鞘の中にある間は、まだ世界に生まれでる前の一体の状態。そこから、きっかけがあって生まれ出て、刃が空を斬る。
人の一生って、いかに自分は自分をとりまく世界と違うモノなのかを見いだしてゆき、そしてその一方でいかにしてその世界とまた一つになるのかを探していく過程とも言えると思います。
剣は、モノを斬る、分ける道具です。私たち人間もまた、生まれ出たときに世界から切り分けられ、自意識を発達させ、言葉を使うようになって世界を切り分けてゆきます。それは、剣を抜いて振り切るまでのよう。人はまた、いつの時点からかは、この世を去ってまた土に、空に戻ることを意識し始めます。それは、振り切った剣をまた、鞘に納める過程のように感じます。
そんなことを考えながら抜刀納刀を稽古します。そして、全ての剣法の所作を、意識的に抜刀納刀と同じ"何か"から繰り出せるようになりたいと思います。
また一方、自分の生き方における抜刀納刀を見いだし、人や物事との関わり方にも活かしてみたいと思いす。皆様本年もどうぞよろしくお願い致します